アメリカ駐在、赴任までどのようなキャリアを経てきたのか?周りを見ると飛び抜けた話ばかりが目に付き、「普通の」社会人のキャリアを見る機会がなかなかありません。今回、自分の今までのキャリアを話題になっている本を元に棚卸ししてみました。
「このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む」転職の思考法
と誰しも一度は考えたことがある転職について副題となっている本書。
ツイッターで話題になっていたので、2019年最初の本として読みました。
結論は、転職を考えている人も、考えていない人も、初めて就職する人も、みんな読んだほうが良い!
私自身は特に転職を考えているわけではありませんが、自分のキャリアを考える上で非常に参考になった本でした。
私が参考になった点をまとめた上で、記録として自分の今までのキャリアの棚卸しを致します。
キャリアの部分は長文ですが、気が向いたら読んでください。
皆さんのキャリアを考える上での参考になれば幸いです。
Table of Contents
『転職の思考法』のまとめ
・自分の現在のマーケットバリューを知り、伸ばす視点
・良い会社とは?
・自分は何に重きを置くタイプか?
マーケットバリューの測り方
今の会社での価値ではなく、世の中から見た自分の価値
「もしこの世の中に、会社が潰れても生きていける大人と、生きていけない大人の2種類がいるとしたら、両者を分けるのは何か。それが「上司を見て生きるか、マーケットを見て生きるか」だ」
マーケットバリューは 技術資産 x 人的資産 x 業界の生産性 の組み合わせで決まる。
技術資産 = 専門性
人的資産 = 人脈(自分が転職したとしても仕事をくれる人はいるか?)
業界の生産性 = 10 年前とまったく同じサービスを、同じ顧客に売っている場合、その市場は既に成熟している可能性が高い。
<すべき質問>
今の会社・職場にいることで、自分のマーケットバリューは向上されているのか?
良い会社とは?
強い会社というのは、いつでも転職できるような人間が、 それでも転職しない魅力的な会社。
・会社としての良いという軸と転職して良いかという軸は必ずしも一致しない。
・転職後期に迷いが生じたら、そもそもの目的に立ち返ること・マーケットバリューと給料は長期的には必ず一致する。すでに給料が高い成熟企業と、今の給料は低いけど今後自分のマーケットバリューが高まる会社とで悩むことがあれば、迷わず後者を取れ。
・転職の最後には『やはり自分がいないと仕事が回らないのでは』と不安になるものだ。だが絶対に回る。会社とはそういうもの。
自分の軸と会社・職場の軸の両方で見る
自分は何に重みを置くタイプか?
人間には「何をするか」に重きをおくto do型の人間と、「どんな人でありたいか、どんな状態でありたいか」を重視するbeing型の人間がいる。99%の人間はbeing型である。だから、「心からやりたいこと」がなくても悲観する必要はまったくない。
世の中の見る成功者の話はほとんどがto do型の人間の話なので、beingの人は心配しなくても良い。
(私もbeingのタイプ)
私のキャリア棚卸し
大雑把なキャリアとしては、
エンジニア ➡︎ ビジネスサイドへの転換 ➡︎ 海外駐在(イマココ)
2006年2月 (25歳) – 2010年9月 (29歳) :4年8ヶ月
化学を専攻していた大学院の博士課程を中退して、日系メーカーに材料系エンジニアとして入社しました。
大学院を中退しているので中途半端な入社月です。
中退して就職した理由は、単純ですが、当時付き合っていた彼女(今の妻)と早く結婚して一緒に住みたかったから。
人生、何をやるかも大事ですが、「誰と一緒にやるのか?」はもっと大事です。
今でも早く結婚して良かったと思っており、全く後悔はありません。
会社を決めたきっかけも単純な理由です。自分が小さい頃から好きな商品を作っている会社だからです。
化学専攻で分野が違ったことから、最初は候補に入れていませんでした。
そんなとき、たまたま同社の商品の開発ストーリーの本を読み、この会社に入りたい!と思いを強くし、採用ウェブサイトを見ると、少し近い分野の募集があり受けました。
このときに本社と子会社の両方を受けていますが、実は子会社の採用では落ちています。
親会社が必ずしも子会社よりも入社が難しいわけではありません。タイミングと相性の要素はとても大きいです。
僕が入社した会社は、内定と同時に配属先が伝えられます。配属先に決まったのは主要なビジネスではなく、小ぶりな世間に知られていない部署です。
内定が決まって嬉しかったのと同時に、配属先に正直がっかりしました。
あとで考えると、マイナーだけど成長領域とされていた部署に配属されたのは非常にラッキーでした。
珍しい材料系のエンジニアであったため、入社した部署では9年ぶりの新人。
人手も足りず、運が良いことに入社直後からとても多くのチャンスをもらえました。
【技術資産】 = 専門性
・新商品の開発・商品化
・塗布工場での量産化
・工場での生産検査、出荷検査
・材料調達
・アメリカ工場の新生産ライン立ち上げ(3ヶ月アラバマに滞在)
・材料のアメリカ現地調達
・ドイツの新規ベンダーとの商品開発(ドイツ出張)
・オランダ倉庫での商品アセンブリ担当
・メキシコ工場での商品アセンブ担当
この4年8ヶ月で幅広いことを挑戦させてもらえて、感謝の気持ち以外ありません。
【人的資産】 = 人脈
・社内での人脈
・工場メンバーとの人脈(日米)
特にアメリカメンバーは、現場のワーカーととても仲良くなり、今でもFacebookで繋がっています。
2016年には家に遊びにも行きました。
・ドイツの協業メーカー
等、幅広く付き合っていましたが、「自分が会社を辞めたときにサポートしてくれる人がいるか?」というと、正直自信がありません。
業界の生産性
大企業でありながらも、最初に入社した部署は当時の「成長領域」になっていた事業で、そのため自分の実力の限界を超えた仕事にチャレンジできたことはとても良かったです。
この時の経験から、事業規模が大きすぎず成長している部署や会社に入ることを個人的にオススメしています。
手を上げれば若くても大きなことを任せてもらえる確率が高いし、ビジネスを回すのに各部署がどのような役割を担っているのか学べます。
なお、このときにアラバマの大田舎に滞在して、アメリカ南部を知ったことは非常に良い経験で自分の視野が広がりました。
また、アメリカへの出張で毎回使っていたのがデルタ航空で、当時のデルタは、シート・機内食・サービス、どれをとっても酷かった。最低限を知れたからこそ、今アメリカ系の飛行機でサービスが悪いことがあっても文句がありません(笑)
2010年10月 (29歳) – 2012年8月 (31歳) :2年10ヶ月
苦労して立ち上げたアメリカの工場でしたが、エンジニアとして工場に駐在することも決まっていましたが、その後の事業の選択と集中の中で、事業を他社に売却し、工場も閉鎖することとなりました。
せっかく立ち上げた工場が閉鎖、そして事業も売却することになり、もともと考えていたエンジニアで海外駐在して、その海外経験を提げてマーケティングに移るというキャリアプランが消え、キャリアで最も悩んだ時期でした。(今思えば甘いキャリアプランであることも否めません)
妻とも相談し、会社を辞めて当初からしたかった海外MBA留学することを決めて、TOEFLやGMATの教材も購入しました。
日曜日に教材が届き、さあ、勉強をしようと思っていた翌日の月曜日の朝。
アメリカの工場立ち上げで、一緒にプロジェクトを進めていた商品企画の部長の秘書さんから、少し時間がほしい、と呼び出されます。
商品企画部長から「事業を売却するが、その事業のことを知っている人に事業売却のプロジェクトをして欲しい」と誘われました。
この日が私にとっての ビジネスサイドへのキャリア転換 となりました。
自分の将来を計画しておくことは重要です。それにより、将来の夢が実現しやすくなります。
一方、現実として、計画したキャリア通りに進むかどうかは分かりません。
当時キャリアに悩んでいたときに読んだ本です。
「計画的偶発性理論」というスタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した理論で「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」というものです。
読んだときはそんなもんかと思っていましたが、まさにその通りに現実がなりました。
今キャリアで悩んでいる人がいたら、とにかく
・キャリアは自分の思う通りには行かない
・ただ、とにかく将来を計画だけはしておく
ことを意識しておくことをオススメします。
異動先での事業売却と事業部長スタッフの仕事は本当に忙しく、死ぬかと思うくらい働きましたが、毎日毎日、自分が成長している実感がありました。
(※やりがいがあったので全くブラックではありませんでしたし、ブラック企業や過労を推奨するものではありません)
また、この時期、自分のスキルの幅を広げようと、グロービスでInternational MBA (英語クラス) と日本語MBAの単科クラスを自費で受講しました。知識として理論を入れておくことで、実際の業務で問題に直面したときに構造化して考えられるようになったのでとても良い投資でした。
【技術資産】 = 専門性
・事業売却(技術移管、製造移管、顧客移管、売買契約、Force Majeure)
・事業部長のスタッフとして、マネジメントの視点、事業戦略、事業推進、事業運営
・ビジネス系スキルの知識 (論理思考、プレゼンテーション、マーケティング、アカウンティングなど)
【人的資産】 = 人脈
マネジメントや他部署、事業売却先との接点が増えました。
しかしここでも同様、「自分が会社を辞めたときにサポートしてくれる人がいるか?」というと、正直自信がありません。
事業売却の際に、元々いた事業に所属していた立場から事業売却をする立場に変わり、元の部署のメンバーから売却の立場に回った嫌なやつとの目でも見られ、多くの敵も作りました。
今であればもう少し上手く立ち回れたかなとも思いますが、当時の自分の未熟さが悔やまれます。
この時の経験から、事業売却・閉鎖=人が関わる ということを肌身で知り、簡単に事業売却や閉鎖を口にする人を信用できません。
この時期にグロービス経営大学院で一緒に学んだ友人(外国人・日本人共に)とは今でも繋がっており、貴重な財産となっています。
業界の生産性
・事業売却は事業の縮小
・事業部長スタッフとしては、成長領域の事業に関わることができました。
2012年8月 (31歳) – 2016年12月 (35歳) :4年4ヶ月
事業戦略の仕事は楽しかったものの、もっと自分の手を動かして事業を回す経験をしたかったため、同じ事業部の中で、一カテゴリの商品企画・マーケティングに異動しました。
異動した際は私を入れて3名体制だったのが、社内での転籍などにより、半年後に私1人の体制となります。
今まで経験の無かった分野で右も左も分からない中、経験豊かなセンスのあるエンジニア、販売会社のメンバー、皆に教えてもらいながら事業を拡大し、この4年間で事業を数倍の規模に出来たのはとても良い経験でした。
ビジネス拡大できたため、最終的にはチームメンバーが3人になり、そのリーダーをしました。
【技術資産】 = 専門性
・商品企画
・マーケティング(全世界)
・展示会での出展(計画、準備、ブース運営)
・英語、プレゼン力(かなり頻繁に海外出張しており、この時期に伸びました)
・チームマネジメント
【人的資産】 = 人脈
他部署や他社とのコラボレーションも積極的に仕掛けたので、この時に多くの人脈が出来ました。
手前味噌ですが、この時に出会った人の中には「自分が会社を辞めたときにサポートしてくれる人」もいると思いますし、実際、転職した海外の元同僚から、転職先の海外の会社に一緒に移らないかとも誘われました。
業界の生産性
新しいトレンドが出てきた中で市場も伸びていました。
商品企画・マーケティング担当となり、業界3位のポジションから業界1位、リーダーのポジションへ。
フォローワーの立場から、業界全体の市場規模を如何に拡大するか、という立場に変わり両方の視点・戦略を見ることが出来たのは非常に良い経験でした。
2017年1月 (35歳) – 2020年4月 (39歳) 3年3ヶ月
元々海外で働きたいという思いが強く、海外駐在を希望していました。
日本で商品企画・マーケティングをしていて事業からは離れますが、別の事業で機会があり、アメリカにマーケティング職で駐在の機会を得ました。
【技術資産】 = 専門性
・営業
・販売会社でのマーケティング
・アメリカ人、カナダ人とのコミュニケーション
・アメリカ、カナダの文化
【人的資産】 = 人脈
アメリカはドライなイメージがありますが、実は、人と人とのウェットなコミュニケーションを重視します。
(あいつのことが好きだから買う、のように)
如何にコミュニケーションを円滑にするか?を日々考える毎日でした。
業界の生産性
当時は市場も拡大し続けており、競合もいるので良い状態で、更には2019年から担当ビジネス領域が増え、既存ビジネスに加えて、新規領域ビジネスのマーケティング、事業立ち上げも見ることになりました。
2020年5月 (39歳) – 2021年7月 (40歳):1年3ヶ月
そして2020年5月から、欧州で立ち上げた新規ビジネスの欧州外への海外展開を見るためにUKに横移動となりました。
【技術資産】 = 専門性
・欧州発のソリューションの海外展開(US、アジアパシフィック、中国、日本)
・大企業内の社内スタートアップとしての仕事の進め方
・欧州各国とのコミュニケーション
【人的資産】 = 人脈
UKは1年少しでしたし、コロナ禍でしたので、深いコネクションはできませんでしたが、新しい仕事を通じてコネクションが広がりました。
業界の生産性
新規事業での対象市場は市場も拡大し続けており、競合もいたので良い状態でした。
2021年8月 (40歳) –
海外駐在は非常に学びが多かったし、海外駐在をさせてもらえた会社にはとても感謝していたのですが、子どもの教育や自分たち夫婦がやりたいことを考えてオランダに移住しました。
以上、長文になりましたが、『転職の思考法』まとめと、私のキャリア棚卸しを紹介いたしました。
私の経験が誰かの参考に少しでもなれば嬉しいです。
Yoshi @yoshi_kotch
[…] アメリカ駐在までのキャリア棚卸し:『転職の思考法』(北野唯我著) […]